上方伝統芸能ナイト。

素直に面白かった!


 さすがに昨日は疲れたのでぐっすり……とはいかないあたりが面倒なのですが、とりあえずぐだぐだ寝て10時ぐらいになんとか起床。洗濯と家計簿は片付けたもののお昼を食べて日記に手を付けようとしたところで時間切れ。仕方がないのでそのまま身支度を整えて出発しました。

 本日はZちゃんの研究室の後輩がやっている山本能楽堂さんでのボランティアスタッフに参加するのです! 空前の野村萬斎ブームによりすっかり古典芸能に興味津々になってしまった私。「にほんごであそぼ」を毎日録画で延々見続けていることもあり、Zちゃんに熱く語ったりもしていたので後輩くんがボランティアをやっているという話をもってきてくれたのです。Zちゃんからのお誘いに二つ返事で行くー!!と即答したら後輩さんの方がびっくりしたらしいですが(笑)でも萬斎さんにはまってなくたってもともと興味はあるしやってみたいじゃないそんなの!

 ちなみに我々が行ったのは山本能楽堂さんが月2回程度開催しているという「初心者のための上方伝統芸能ナイト」というイベントのボランティア。能・狂言だけでなく広く上方伝統芸能を理解してもらおう!といことで能・狂言はもちろん文楽上方舞、落語、浪曲、講談、はてにはお座敷遊びまで10分〜15分の短い時間で4つずつぐらいやってくれるというなんともおいしいイベントなのです。「ええとこどり」でまずは味見してもらって、気に入ったものがあったら本格的な公演に行ってみてね!というイベントなので、結構人気なんだそうですよ。

 そもそも私は大阪市内に能楽堂があることすら知らなかったし、ましてや谷町四丁目の駅のそばのビル街のなかにひっそりとあるなんてもっと知りませんでしたもの。行ってみてまずそのこじんまりさにびっくりし、(歌舞伎座は行ったことあったけど構えがどーん!って感じでしたもん)中にはいってみたらいきなる歴史ある能舞台がまたどどんとあって感心しました。なんでも能楽堂自体は昭和初期に作られたものらしいんですが、一度大阪大空襲で焼けたのちに復興したそうです。現在も積極的にいろんなイベントや公演をやっていて、広く理解してもらうために字幕をつけたり解説をつけたり、ワークショップや体験コーナーを設けたり、いろんなことをされているんですって。全然知らなかったなぁ。

 しかも最近改装されたらしく、なんとLED照明が採用されておりました!! 昔は能舞台は屋外にあるのが普通で、自然光の中(もしくは薪火の中)でやるのが普通だったので、それをLEDで再現できるような仕組みを取り入れたそうです。なので、たとえば夕焼けとか炎の明かりとか、逆に朝焼けや緑の光など、いろんな表現が可能でより一層情緒的な演出が可能なのだとか。ううむ、最先端技術と伝統芸能の融合……!(こんなん大好き)

 能舞台のつくり的にも珍しいらしく、音を反響させるための瓶が舞台の下に埋めてあったり、桟敷席があったり、能舞台としても貴重だということで文化財として登録されているそうです。ううむ、すごいな!

 で、肝心の私たちの仕事は何かというと、配布するチラシのセッティングおよび座席準備。当然のことながら席はすべて畳なんですが、伝統芸能ナイトは(それともほかの公演もかな?)椅子席を用意するということで長椅子を準備したり(でも畳を傷つけないように薄い板をひかないとだめなんですけどね)、座布団を並べたり。その上にチラシ類を一部ずつセッティングして協賛してもらっているというサントリーさんから提供してもらった伊右衛門のミニペットを並べて準備完了。開演30分前になったら開場ということで初めての私たちはひとまずお客さんの誘導。一応正面がS席、近すぎる桟敷席(座布団)はA席、横向きの席はB席と決まっているのでチケット確認して誘導してました。お手洗いの誘導とかね。当たり前ですが廊下とか全部板間なんでストッキング一枚で挑んだらめっちゃ足冷えましたけど!! 次行くときは靴下重ね履きしていかねば。

 でもなんだかんだでイベント開催してるし、参加もよくしてるので大体動けるもんですね(笑)他のボランティアスタッフさんは何度も参加してらっしゃるとのことだったんですが、みなさん年配の方でびっくりしました。若い子っていったらその後輩君と我々ぐらいしかいなかったんですもん。いや、まあ若い子が参加することの方がまれなのかな……しかも3人ともド理系やしね……。

 無事に入場完了したらあとは二階席で見てていいよ(今回はいつもより客席が少なくて2階席を使わなかった)と言われたので二階席正面をゲット。普通に開演から終演までがっつり鑑賞させてもらえました! なんだったらお茶とお菓子までいただいちゃったりして。

 ちなみに今回の演目は落語・講談・上方舞文楽の4つ。司会進行は落語家の方が毎回担当されるということで当たり前ですがしゃべりも軽快であります。最初に全体の説明があって、そもそも上方落語とは、上方講談とは……とそれぞれの簡単な解説。また演者さんにも出てきてもらって今日やる演目の紹介もしてもらいました。ちゃんと配布資料には説明も載ってますし、説明の字幕はちゃんと4か国語(日本語・英語・中国語・韓国語)で放送されてるし、お客さんも結構外国の方が多かったです。

 まずは講談。講談というものを始めて聞きましたが素直にめっちゃ面白かったんですけど!!! 元は軍記物から発生し(なんでも文字が読めない人々に本を読んで聞かせるのが始まりだったそう)江戸時代には武勇伝、仇討ち、お家騒動、政談のほか、庶民の生活などの描いた世話物が一世風靡したそうなのですが、なぜか今回は中でもマニアックな明治物と呼ばれる明治時代のお話をされてました。タイトルは「快男子 星亨(ほしとおる)」というなんともいえないもの。明治の税関庁の職員が横浜で抜け荷(脱税)を行うイギリス商船を相手にコテンパンにやっつけるというまさに快男子の星さんのお話だったんですがまー面白かったですね! ていうか普通に軍記物も聞きたいし武勇伝も聞きたい!と思いました(思う壺)

 続いて落語もこれまた明治物で合わせるということで、人力車夫を描いた狐車という演目をされてました。落語は馴染みがあるので普通に聞いてて楽しかったんですが、上方落語の特徴というのは効果音なんだそうです。江戸落語は効果音も含めて落語家ひとりが話しますが、上方落語はBGMがついて、太鼓や銅鑼、三味線などがつくそうです。太鼓は他の落語家さんたちが話に合わせて叩くそうですよ。どうやら上方落語はどっちかっていうと大道芸みたいなものだったらしく、通りすがりの人たちを引き留めるためにとにかく目立つ必要があったそうです。なんかわかる気がする(笑)でもこれも面白かったです!!

 ちなみに途中で体験コーナーとして落語の鳴り物体験があったんですが、見に来られてた外国人の方が楽しそうに太鼓叩いてました。いやーこっちもなんかうれしくなるよね!

 上方舞は初めて知りましたが、近世に京都・大阪を中心におこった舞踊の総称だそうです。基本的には座敷の中で屏風を立てて舞うのが基本ということで、まあお座敷で披露するものですね。イメージとしては確かに舞台というよりはお座敷です。そのせいもあって、舞と踊りの違いは、舞は基本的に旋回運動で静かなもの(埃を立てちゃいけませんからね!)で、踊りは舞台で派手に足を上げて踏み鳴らす躍動感あふれるものだそうです。歌舞伎とかはそうですね。これまたなるほどなるほど。今回披露された山村流さんは歴史も古く、上方舞の四流派のうちでもっとも古いそうで、花街はもとより子女の行儀見習いとしても浸透したそうです。私が思ってたいわゆる日本舞踊、というものとそんなに大差はなかったんですが、やっぱり綺麗ですねぇ。ちなみに地唄(元の流行りの歌)で「八千代獅子」という大変おめでたい唄だそうです。小さな獅子舞さんを手にもってしゃんしゃんやったり、扇を広げてくるくる回したり、やっぱり綺麗な動きというか所作というものはそれだけで感服します。よく考えたら舞じゃないですけど小さいときに天理教のみかぐらうたとか普通に踊ったりしてたもんなぁ……。変な話小さいころ祖父につれられてせっせと教会に通ってたおかげか太鼓、鼓、三味線、笛、琴などなどは普通に聞いてたしふれあってましたもんね。なじみ深いはずですわ。

 最後は文楽! 生で文楽を見たのははじめてでしたが予想以上に良かったです!! 元は人形浄瑠璃と呼ばれてましたが、文楽というのは最後まで大阪で残った一座が文楽座という名前で、それがそのまま人形浄瑠璃の代名詞として親しまれるようになったから、とのこと。演目は「二人禿」。京都の遊郭の禿(見習いの少女)ふたりが遊んでいるほのぼのとした姿を描きながらも、郭の中で生きていくという悲哀みたいなものも感じられてほろりときました。正直太夫さんの長唄は字幕なかったらわかんなかったんですけど!(てへ)でも3人で1体の人形を扱うというその芸は本当にすごかったです。黒子は本来「くろご」と読むらしく、きほんてきには「見えていない」ことが前提なのだとか。いやでも本当に三人がそれぞれ頭と右手、左手、両足を動かしてるのにその一体感たるや! 小道具の羽子板やてまりなんかもきれいだし、表情もしぐさも本当に情緒豊かでした。きらびやかな衣装に飾られた二人の禿が羽子板をついて遊んだり、手毬で数え歌を歌ったり。いや本当に良かったんです文楽が!! 飽きなかった!!

 ……まあよく考えたら私は今毎日「にほんごであそぼ」を見ているので義太夫節とかめっちゃでてくるんですよね。節回しとか言い方とかに耳そのものが慣れていたんだな、と鑑賞してみて改めて思いました。みんな、にほんごであそぼ、見るべき!!(握りこぶし)だって文楽人形も出てくるし講談も浪曲も出てくるし、いわずもがなの萬斎さんだし、日本の唱歌もあるし、名文だって学べるし!!(だからといって小さい子が「働けど働けどわが暮らし楽にならざりじっと手を見る」とか読んでるのはどうかと思いますけど/切なくて泣くよ)

 終わってからはゴミ回収と座席の撤収ぐらいですぐに解散。いやでもここまでがっつり鑑賞させてもらえるとは正直思ってなかったんで、この仕事量(チラシセット+座席設置+誘導)だけでB席3500円のレベルで見せてもらえたんですよ?(お茶・お菓子つき) 見返りの方が多すぎて逆に遠慮するわ!!とか思うレベルでした。普通に次回も来たい……!! 4月から6月の予定がまた出たら連絡してくださるそうなので都合が会う限り行きたいなーと思います。いや本当においしい。何回か通ったらチケットがもらえるらしいのでYちゃんあたりを招待したいと思います。いや本当に面白いんだって! 次はやっぱり能・狂言が見たいなぁー。浪曲やお座敷遊びも気になるところです。わくわく。

 3時半に集合して、8時半には終了したのでそのまま近くの居酒屋でZちゃんと乾杯。後輩君は別の予定があるというので行ってしまったんですが、いや面白かったよね、といいながら普通に飲んでました。なんだかんだで語り合って22時半には店を追い出されてしまったので(まあ谷四じゃしょうがないか)帰宅したんですが、大満足であります。いや本当に良い経験になりました! 

 今日はここまで。