保存技術の本気。

思わず二度見。


 今日は夕方から正倉院展に行く、ということで勝手ながら早めに帰らせていただきます、と宣言してあれこれ片付けていたら、そんな日に限ってあれこれ起こるというね! この一週間学生も来ないし先生から来たメールもノックよろしく打ち返していたというのにここにきて、という感じでございます。というか教授会日程の件でつらつらと先生にメールをお送りしたところけんもほろろに言い返されたの巻。結局タイから帰国したばかりの同僚にお任せして旅立つことになりました。まあ私がどうしようと太刀打ちできるものではなかったんですけど!

 で、なんとかそのままカートをひいて奈良に直行。Yちゃんと合流して正倉院展に向かいます。Yちゃんが招待券を手に入れたということで行ってきたのですが、今日は初日。昨日は皇太子殿下がこられていたということで号外をいただいたりいたしました。今回の第66回は天皇皇后両陛下の傘寿記念でございますからね!

 招待券なので並ばずにスムーズに入れた上に、結構中は空いてました!! やっぱり平日の夕方というのはねらい目かもしれません。金土日祝は19時まであいてますので。

 正倉院展は2回目なのですが、前回はまあ人で一杯でほとんどちゃんと見られなかった記憶しかなく、こんなにゆったりと、としてじっくりと見られるのはかなりの感動でした! 大仏開眼の儀式で使われたものからスタートしたのですが、まず何が凄いって普通に伎楽を披露するときにきていた装束の下着がそのまままるっと残されているという事実ですよね! 下着が残っているのはまだわかるんですけど、問題はその残り方ですよ。まったく損傷がないんですけど……! 一瞬1300年ってどれぐらいだっけ? ってポカンとするような綺麗さ。

 布でそんなもんなので、目玉のひとつでもある聖武天皇大仏開眼会の際にはいていたという赤いお靴(衲御礼履/のうのごらいり)とか、あざやかな赤色そのまま、装飾そのまま、形そのままでそっくりそのまま残されていて、気が遠くなりました。だってこれ1300年前のものですよ? え、複製とかレプリカとかそういうことじゃなくて、本物???とひたすらキョトーン。

 それから今回の出陳品の中で目玉はなんといっても鳥毛立女屏風(とりげりつじょのびょうぶ)。美人画に実際に鳥の羽根を装飾に施したもので、羽根こそ今はないですが、たおやかな美人画として歴史の教科書に載っております。まさに教科書で見たアレ!ですね。実際に間近でみるとやはり本当いお美しいというか間違いなく美女であります。これに山鳥の羽があしらわれていたら大層綺麗だったのであろう、という想像がつきますね。ちなみにやはり江戸時代にいくつか補修がされているそうで、新しい部分もありました。

 そのほか、開眼会の際に使われたという桑木阮咸(くわきのげんかん)や、聖武天皇光明皇后が使われていたという調度品の数々など、まあどれもこれも保存状態が凄い! いや物自体が一級品で奈良時代の超絶技巧が施されていてすばらしいのは間違いないのですが、それが今目の前でこうして我々がそれを拝見できるという事実におののきまして。カイロの考古学博物館を見たときに普通にBC1300とか書いてあってうん??となる感覚に似てますね。もうこうなってくると1000年ぐらいたいしたことないよね!みたいな心境になってくるというか。だってそれぐらい全ての品々が綺麗だったのですよ……! 石とか遺跡が残るのはわかるんですけど、ベッドカバーが1300年残るっていう意味がよくわからないわ!!

 勅封の凄さをしみじみと感じつつ、武器ゾーンへ。実は阿倍仲麻呂さんの乱で武器の類は結構散逸してしまったらしいのですが、やはり大陸文化を受けているというのもあるのか見慣れぬ武器が結構ありました。まだ剣から刀への過渡期でもありますしねぇ。

 そして結構おもしろかったのが正倉院文書! 過去の事務文書ががっつり残されていて、今と全く同じような、税関係の出納帳だったり、請求書だったり、戸籍だったり地図だったり、開拓の計画書だったり、今とまったく同じくタイトルがあって、本文があって、日付があって、最後に請求者の名前とサインと判子、ってあたりがまったく何も変わってねぇ!!!としみじみ思いました。そりゃ1300年間印鑑文化で生きてきたんだからおいそれと印鑑捨てられないってもんですよねぇ。お墨付きといえばやはり印鑑ですもの。

 あと当たり前の話ですけど、文書類に一切ひらがな・カタカナが使われていないのが新鮮でした。まだ開発されてないですもんねぇ。でも漢字の楷書は今とまったく変わらず、すんごい綺麗な読みやすい字でした。これも受け継がれていくんですね。

 最後は宝物を献上する際の箱やらなんやらだったんですが、全体通していえることでもあるんですが、デザインが結構前衛的なんですよね! 大陸風なのもあるし、日本風なのもあって、それがひとつのものに組み合わさって、ざっくりオリエンタルといってしまえばそれまでなんですけど、新鮮でした。

 がっつり見たあとはお土産コーナー。いつもの数倍の特設コーナーが設けられていました。ここで買わねばなるまい!ということで結局ピルケースとお懐紙とシールを購入。他にもいっぱいグッズあっていろいろほしかったんですけど、結構持ってるしな〜ということで断念です。

 晩御飯は王将で餃子とラーメンとビール。先週の宇都宮で食べた餃子とラーメンがあまりにあっさりとお上品な味だったのでね! それはそれでおいしかったけど、この餃子で慣れてしまった私にとってはこっちが落ち着くわーということでもりもり食っておりました。

 食べた後はサンマルクに移動してコーヒーを飲みながらお仕事談義。最終的にいつものように天理経由で帰宅したのでした。でもこの仕事帰りに奈良博コース、結構便利なので今後もちょいちょいやらかしそうだ(笑)

 今日はここまで。